歯周炎は、嫌気性細菌の感染による慢性の炎症性疾患であるが、その発症や進行過程には、宿主の感受性・抵抗性だけではなく、遺伝的因子や環境的因子などが大きく関与している。そこで、糖尿病が宿主の感受性・抵抗性を介して、喫煙とともに歯周病の危険因子であることは、多くの報告により支持されている。また、糖尿病は、生活習慣として、特に、食習慣や運動習慣、喫煙に関連し、歯周病は、食習慣や喫煙に影響を受けている。したがって、歯周病は、糖尿病合併症として留意する必要がある(2008年より糖尿病治療ガイドに記載)。そして、最近の両者の関係を評価したメタアナリシスから、糖尿病患者はより重度の高い歯周炎を伴うことや血糖コントロール不良者は、コントロール良好者や非糖尿病者と比較して、歯周炎がより進行していることが示唆されている。
さらに、糖尿病患者への歯周病治療の介入研究により、歯周病の治療を行うことにより血糖コントロールが改善することも、メタアナリシスで提示され、糖尿病診療ガイドライン2019では、定期的な歯科治療が推奨されている。
押村憲昭