掌蹠膿疱症とは、手掌と足底、あるいはそのいずれかに新旧の無菌性膿疱が多発し、消長を繰り返しながら慢性に経過する疾患である。膿疱が痂皮となって落屑するうち紅斑を伴い、爪病変もしばしばみられる。日本人に多く、10~30%に胸鎖関節炎をはじめとする掌蹠膿疱症性骨関節炎を合併する。掌蹠膿疱症性骨関節炎は、胸鎖関節炎のほか脊椎炎、仙腸関節炎、末梢関節炎、長管骨の骨髄炎など多彩な臨床を呈する。露出部位であり機能部位でもある手足に多発する膿疱や、骨髄炎を呈する骨関節症状の激痛は、患者に大きなQOL障害をもたらす。掌蹠膿疱症は乾癬の類縁疾患であるため、乾癬と同様に「治らない疾患」と誤解されがちであるが、日本人の掌蹠膿疱症の3/4以上で病巣感染が発症契機となっており、 病巣治療後、1~2年かけて過剰な免疫反応が沈静化し、皮膚症状は治癒または略治する。 病巣としては歯性病巣、病巣扁桃が重要で、ほかに副鼻腔炎、腸のDysbiosisが関与する例もある。喫煙も関わってくる。扁桃摘出術の有効性は、耳鼻科、皮膚科の両科より80%程度と報告されている。掌蹠膿疱症性骨関節炎に対する扁桃摘出術の高い有効性も示された。
掌蹠膿疱症の病巣感染で重要な点は、病巣がどれも無症状であることである。検査データも参考にならず、かつての炎症の概念では理解できない。しかし、掌蹠膿疱症患者の扁桃細胞はαレンサ球菌により炎症性サイトカインやケモカインを過剰産生するなど、免疫学的エビデンスが蓄積されてきた。治療上でしばしば議論されるのは、無症状の病巣をどこまで治療すべきか、歯科金属除去は行うべきかの2つである。しかし今、掌蹠膿疱症の患者会が設立され、掌蹠膿疱症や掌蹠膿疱症性骨関節炎が患者の日常を奪うほど重大な疾患であるとの訴えがあることから、皮膚科医、リウマチ整形外科医は病巣を扱う耳鼻科医、歯科医、そして患者本人と、症状や予測される予後、病巣治療という選択肢とその侵襲に関する情報を共有し、有効な治療の1つとして病巣治療も検討する必要がある。皮膚症状から金属アレルギーが疑われる例では、歯科金属以外に食事性の場合もあること、掌蹠膿疱症性骨関節炎への関与はエビデンスがないことに注意すべきである。皮膚症状は時間を経ても治癒するが、骨関節炎が慢性化すると治りきらず、病巣を放置して消炎鎮痛薬のみで対処し続けると脊椎骨折をきたす例もあることを知っておかねばならない。
なお、掌蹠膿疱症の患者情報サイト、https://ppp-community.com/では有用な情報を発信している。
小林里実