IgA腎症をはじめ掌蹠膿疱症、頭痛・咽頭痛、咳嗽、後鼻漏など慢性上咽頭炎に対し、EATを行うと有効であることは本研究会、実臨床で実証済みである。
しかし、小児、痛みや血液への過敏、不安障害などの精神的な不安定さ、遠方で通院が困難、出血傾向がある患者などEATを定期的に行うことが困難な例も少なくない。
そこでEATを行わずに慢性上咽頭炎へのアプローチを論じていきたい。慢性上咽頭炎を改善に向かわせるためにできることは
1,新しく炎症をおこさない
2,炎症を鎮める
3,炎症を起こしにくくする
4,修復を助ける
などが考えられる。そしてこれらをできるだけ多く組み合わせることが有効と考える。
それぞれの項目について検討していくと
1,新しく炎症をおこさなさいためには、上咽頭周辺の炎症を起こしやすい要因を排除していくこと。口呼吸をできるだけ避け、夜間は口テープなどを使用すること。喫煙、空気の汚れた場所になるべく行かないようにし、そのような場所に行く場合は防護する。齲歯や歯肉周囲炎を作らない、すでに存在しているなら治療をしていく。また、食事と炎症は関係が高い。乳製品は上気道・鼻との炎症との関わりがあり、砂糖、加工品、小麦製品にいたっては粘膜の炎症や腸内環境の悪化,抗原の交差につながる可能性がある。ストレスケアは最も大事と考える。
また抗生物質や制酸剤など多くの薬の内服も腸内環境を変える。また抗アレルギー剤や向精神薬などの粘液の分泌を抑えるものも関わる。薬の見直しは行うべきであろう。
2,炎症を鎮める方法は、塩化亜鉛や梅エキスなどによる上咽頭の消炎は有効である。さらに1,にもあるように食生活で炎症を起こしにくい物にすることに加えて多くの自然の食物は抗炎症作用も持つ。食事を見直すことは助けになる。
3,炎症を起こしにくくするには、ストレスケアや生活改善などにより、免疫細胞、自律神経の乱れの改善などは重要と考える。そして腸内細菌叢を整えることは免疫の状態をよくし、栄養の吸収を促進し、細胞の動きを改善する。
4,修復を助ける、とは炎症を改善し、慢性炎症でダメージをうけた組織の修復をすることである。そうしないと容易に再発してしまう。これはEATを行った場合も同じことが言える。同じような食生活やストレスでいれば容易に再発を起こしうる。きちんと修復のための原材料が体内に吸収され、代謝が促進されていなければならない。
内山 葉子