堀口申作先生は上咽頭とその関連する頭痛との部位について詳細を挙げている。頭痛については別稿に譲るが、咽頭痛や咽頭違和感についてもある程度上咽頭各部位との相関があるように自身の経験からは感じられる。
そして咽頭痛や咽頭違和感を訴える患者の話を丁寧に聞くと、ズキズキする痛みやヒリヒリする痛みや違和感に加えて、上咽頭が詰まる感じであったり、鼻が詰まって息がしにくい、頭重感などという自覚症状を「のどの違和感」という表現で医師に伝えようとしていることもある。また比較的頻繁にみられる状況としては、上咽頭に痂皮や粘液が付着している患者では痂皮の無い患者よりも上咽頭の痛み、違和感を訴える頻度が高い印象がある。
また上咽頭の乾燥感と口呼吸の関連は無視できない要因だと思われる。歌手や学校の先生など職業柄、声を酷使する人では、短時間に長い文をしゃべるためどうしても口呼吸になり、口から吸いこんだ空気が十分に加湿されないままに上咽頭に流れ込み上咽頭の乾燥感の原因になる。口呼吸の是正には夜間口テープやあいうべ体操などが有用である。
上咽頭全体が慢性炎症を起こしている場合には患者は、「上咽頭のどの部位に炎症があるのかはっきりしないけれど、何となく不調だ」と訴えることも多い。しかし根気よくEATを続け、上咽頭の炎症が収まり始めてくると、患者自身が最後に残る上咽頭の自分自身のポイントを把握できるようになることがある。その際には患者自身が鮮明に上咽頭のポイントを「上咽頭の右上に違和感が残る」と鮮明に具体的な自覚症状を述べ始める。術者が注意すべきこととして、患者が自覚症状として初期にはぼんやりとした部位しか指し示さなくてもEAT導入早期から根気よくEATを継続し、中期に至り患者の訴えがむしろ鮮明になった際に「症状の悪化」だけではない場合があることを知っておくことである。EATでは内視鏡下EAT(Endoscopic EAT)でもシンプルEAT(内視鏡を用いないEAT)でも「わかっていても擦過し残しやすいが天蓋と側壁」という点を重視して丁寧なEATを行うことが肝要である。経鼻綿棒を用いた経鼻法(Transnasal EAT:TN-EAT。トン・イート)と経口咽頭捲綿子を用いた経口法(Transoral EAT:TO-EAT。トゥ・イート)ではそれぞれに長短があり、互いに欠点を補いあうことが可能なため、諸条件が許せば両法を行うことが重要だと思われる。EATはまだまだ広く普及しているとは言い難いが、活発な議論が展開されることを期待している。
田中亜矢樹