トップページ › フォーラム › EAT(上咽頭擦過療法) › 咳喘息・気管支喘息に対するEAT
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2020年9月4日 12:52 PM #101
JFIR 事務局
キーマスター気管支喘息に対する上咽頭擦過療法(EAT)の有効性は昭和50年台から確認をされ、当院は60年以上喘息治療の歴史をもつ医療機関であり、過去に堀口教授が直接指導にいらして下さっておりました。また近年では気管支喘息治療においてone airway one diseaseという疾患概念が注目され、上気道での炎症のコントロールが下気道の炎症のコントロールに重要であることは専門家の間で常識化しつつあります。
但しEATの効果にある、迷走神経を刺激するというものは本来気管支喘息に対しては悪く作用すると考えられます。気管支喘息の症状が夜間、早朝に多いというのも迷走神経が関与していると言われ、迷走神経刺激は気管支平滑筋の攣縮をきたしたり、咳反射を増悪させると言われています。すなわちEATのように迷走神経を刺激することは気管支喘息にとっては悪化させる要因になると考えらます。
しかし前述したように上気道の炎症のコントロールが重要であるために、EATを行う事で上咽頭を含めた上気道における炎症のコントロールがなされると、サイトカインなどの炎症性物質や炎症細胞の下気道への流入を抑えることができることと、EATによる迷走神経刺激による抗炎症効果によって下気道炎症もコントロールすることが出来るため喘息のコントロールも良好となります。
また呼吸機能が正常、その他のFeNOやオキュレーション法による気道抵抗も高くないにも関わらず呼吸苦の訴えがある場合は、鼻腔通気が低下している場合もあり、EATを繰り返すことで鼻呼吸が改善をすると呼吸苦が改善することもあり、患者の自覚症状とデータなどを評価し、現在の症状が上気道由来か下気道由来かを判断する必要が日々の診療で求められます。非専門であり、様々な検査機器が無く、判断が難しい状況であってもEATを実施することは上気道、下気道のどちらに対しても有効な治療であるため、より気道炎症を抑えることができます。現在、医療現場では下気道は呼吸器内科、上気道は耳鼻咽喉科と分けられておりますが、EATを実施している医療機関は上気道、下気道の両方をコントロールすることが可能であり、喘息治療においては非常に重要な立場にあると考えられます。当院での経験上も難治性の咳嗽・喀痰、難治性の気管支喘息の治療の一つとしてEATは大変有効な治療法といえます。
杉原 徳彦
2020年9月10日 1:54 PM #231堀田 修
参加者胃食道逆流症の咳喘息でも上咽頭下部(軟口蓋背面)のEATを加えることで改善効果が向上することを経験しています。
2020年9月19日 4:36 PM #260茂木立 学
参加者自律神経理論、副交感神経刺激で気管支喘息については気管収縮方向に向かい、患者にとっては不利に働く件についてです。それに関連して、耳鼻咽喉科領域では副交感神経刺激でくしゃみ、鼻水が悪化します。初回E-EAT施行後に、何人かの患者に「この前、初めてEATをしてもらったあとから、くしゃみ鼻水が数時間止まりませんでした!」と言われます。患者には「EATで副交感神経を刺激してるんだけど、鼻の中は逆で、くしゃみ鼻水が悪化するんだよね」と説明します。しかしこれも全例ではない気がします。自律神経失調状態で、自律神経のバランスが不良な患者さんは過剰に反応するのかなとも思っています。喘息患者についても同様なのではないのかな!?とも思っています。個人的に今、他院無治療慢性上咽頭炎患者に、EEAT前後でFeNOの変化を見ています。今年JFIRの学術集会があればそこで発表しようと思っていましたが…。EEATでNOはp<0.001で処置後に低下します。nが少ない可能性もあります(n=20)。慢性上咽頭炎の状態ではNOは高く、EATで低下させる事ができ、NO関連の機序で咳嗽を軽快させているのでは?と思っています。呼吸器専門の先生からすると、この結果はどう考えられるのでしょうか?ご教授いただければと存じます。
2020年9月19日 9:23 PM #264杉原 徳彦
参加者堀田先生
大変貴重な経験談をありがとうございます。
最近、私は逆流性食道炎は、症状はあるが内視鏡所見のみられないNARDでも食道粘膜下に炎症がみられるように、実は上気道からの炎症性物質が食道下部に停滞して発生しているのではないかと考えております。
するとEATによって上気道炎症がコントロールされると、食道下部に炎症性物質もたまらないのではないかと考えております。実際に咳をするから逆流するのか、逆流していたことで咳が出ているのかということにも疑問を抱いておりますし、声帯付近にまで胃液が逆流するというのは、よほどの逆流がない限りは食道裂肛ヘルニアでもない限り可能性は低いのではないかとも考えております。
一方で、EATを行うことで自律神経のバランスが整い、げっぷが減って咳も減ったという患者さんも経験すると、自分の考えにも自信が持てなかったりしております。
ありがとうございました。茂木立先生
呼吸器内科ではFeNOは好酸球性炎症の指標として用い、通年性アレルギー性鼻炎や好酸球性副鼻腔炎では高値となるため、EEATを実施することで鼻の炎症が軽減、消失するとFeNOは低下すると思われます。これは一般的な考え方となりますが、私個人としては気管支喘息患者は全員鼻に問題があると考えており、上気道の炎症のコントロールが下気道への炎症性メディエーターが流れ込むことを抑制し、結果的に下気道の炎症を和らげると思いますので、先生のご経験は大変興味深いです。
但しEATや鼻腔ぬぐい検査でもみられるように、上気道炎症による副交感神経刺激で出ている咳嗽と、下気道炎症による気道過敏性亢進にによる咳嗽をFeNOだけでは判断が難しい点があり、スパイログラムやオシレーション法による気道狭窄等の評価も行わないと下気道への効果判定は難しいかと思われます。
しかし気管支喘息治療(吸入ステロイド)をしていてもFeNOが正常化しない方が一定数見られ、このような方々にEEATを実施すると低下する可能性もあり、そのような患者様にEEATの効果が期待できると思いました。
貴重なご意見ありがとうございました。2020年9月19日 10:58 PM #265大澤 立志
参加者アダバイオの大澤と申します。
素人質問で大変恐縮ですが、NOに興味がありますので教えて下さい。
上咽頭部位の炎症により上咽頭からNO産生はあるのでしょうか?
上咽頭部はNOによる血管透過性浮腫が生じているのでしょうか? -
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