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トップページ フォーラム 慢性上咽頭炎関連 慢性上咽頭炎と自律神経機能障害 返信先: 慢性上咽頭炎と自律神経機能障害

#385
TANAKA AYAKIAYAKI TANAKA
参加者

    澤田石順先生、今井一彰先生

    貴重なご意見と論文などありがとうございます。JFIR理事の田中耳鼻咽喉科の田中亜矢樹です。先生もご承知かと思われますが、
    Long COVIDとME/CFSの関連については、AMEDのME/CFS研究班の山村隆先生も日経メディカルの記事の中でもご発言されています。
    先生にご紹介いただいた論文はまたゆっくり拝読させていただきたいと思います。
    私自身、2019年の第15回日本疲労学会でのME/CFSシンポジウム2(2019年5月19日)で「上咽頭擦過療法EATのME/CFSにおける有用性とその作用機序仮説」についてシンポジストを務めました。
    総説論文は査読中です。
    https://site2.convention.co.jp/hirou2019/program/program.pdf
    慢性上咽頭炎、ME/CFS、Long COVIDはそれぞれ未解明ですが、相互に何らかの関連性を持っていると推察されます。
    また嗅上皮の支持細胞にACE2受容体が存在するために、COVIDで嗅覚障害がおこるこことは流行の比較的早期から耳鼻咽喉科領域では問題になっていました。現在でも嗅覚障害の検査治療については、COVID以前と比べても試行錯誤が続いているのが現状です。

    堀田先生や今井先生との共著論文、HPVワクチン副反応後のFSS(機能性身体症候群)に対するEATの効果についての論文は既に掲載されていますが、ある種の薬剤で「鼻咽頭炎」の副作用が報告されているのは興味深いところです。
    以下、2021年7月号(未発売)の日本臨牀特集号で私が執筆担当した「慢性上咽頭炎」の稿から一部抜粋して記します。
    「2016年の段階で医中誌WEBで検索すると200種を超える薬剤において「鼻咽頭炎」の副作用の記載があり、PubMedでの検索でも「Nasopharyngitis」の副作用の記載がある薬剤は同様に多数にのぼる。薬剤としては抗悪性腫瘍薬、抗リウマチ薬、糖尿病治療薬、造血薬、抗認知症薬、抗てんかん薬、抗ウイルス薬(抗B型肝炎薬、抗C型肝炎薬)、ロタウイルスワクチンなどが挙げられ、分子標的薬などが散見される。既にHPVワクチン副反応によるHANS6(HPV vaccsination-associated neuro-immunopathic syndrome)という機能性身体症候群(FSS:functional somatic syndrome )におけるEATの効果について報告(田中注:Immunol。Res.とJ of Antivirals&Antiretroviralsです)しており、ワクチンや抗体製剤(免疫賦活薬)による上咽頭のリンパ組織刺激、アジュバントを介したASIA(Autoimmune/inflammatory syndrome induced by adjuvants)の一表現型としての慢性上咽頭炎発症といった機序が考えられる。」というものです。

    先生のお示しいただいた「鍵となる事実は脳室周囲器官には血液脳関門がないこと」というお言葉には非常に多くの示唆が含まれているように思われます。
    仮に上述のように何らかの薬剤(経口薬や注射薬いずれでも)が鼻咽頭炎を引き起こすとしたら、その経路には脳室周囲器官の血液脳関門が無い部分からの侵入が想像されますし、SARS-COV-2のウイルス自体、ないしはウイルス感染によってもたらされたサイトカインなどの侵入経路は此処から始まるのかもしれません。

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