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西脇先生、貴重な、そして示唆に富む投稿ありがとうございます。
東京医科歯科大学初代耳鼻咽喉科教授の堀口申作先生の門下である谷俊治先生、古屋英彦先生から半世紀以上前の上咽頭擦過療法(EAT)の黎明期について貴重なお話を伺う機会がこれまでにありました。そして、この黎明期時代の業績が今日再興しつつあるEATの礎となっております。これも、先生のお父様である本橋弘行先生をはじめ、その時代にEATに関わりになられた先達の先生方のお陰であることは言うまでもありません。また、東京医科歯科大とは別の大学病院で塩化亜鉛とは異なる薬液であるマンデル氏液を用いてEATが実施されていたことは大変興味深いです。
EATにおいて最も重要な要素は擦過であると感じておりますが、病態によって最適な薬液を使い分けるという柔軟な発想もこれから必要なのかも知れませんね。私は若年性皮膚筋炎の症例を診療したことがありませんのでコメントを差し控えておりましたがレスポンスされる方がおられないのでコメントさせて頂きます。
私が調べた限りでは「Fusobacterium」 と「若年性皮膚筋炎」のキーワードでヒットする論文が見当たりませんでした。しかし、「論文がない=関係がない」というわけではありません。
1.Fusobacteriumは細菌の中でも特に大型の細菌で歯垢形成に関与しているようです。
2.Fusobacteriumの病原性は低病原性歯周病菌群の一つで単独ではあまり悪いことをしませんが、高病原性歯周病菌のP. gingivalisと一緒になってバイオフィルムを形成すると潰瘍形成などを引き起こすようです。
3.潰瘍ができると体内侵入する場合もあり、胎盤を破って流産、死産の原因にもなる菌で深部にまで入り込む性質があるようです。
4.大腸がんでは腫瘍細胞と一緒にFusobacterium塊状になって検出される場合が多いようで多数の論文が報告されています。また、口腔内に存在するFusobacteriumが大腸がんへ移行している可能性を報告されています。また、口腔内細菌叢は腸内細菌叢に影響を及ぼしますので口腔内のFusobacteriumが腸内細菌叢の乱れを介して自己免疫疾患の発症に関与している可能性はありえるかと推察します。ここからは私の私見です。Fusobacteriumは低病原性歯周病菌群の一つで中学生の頃にこの群は形成されるとされておりますから7歳は早すぎるかも知れません。Fusobacteriumが多いからそれを退治しようという発想が出てくるのは当然ですが、別の見方が必要かも知れません。例えばIgA腎症は口呼吸が関与している代表的な疾患ですがIgA腎症の患者さんでは口腔内細菌数と種類が健常人よりも減っていることが報告されています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsme2/36/2/36_ME21006/_article
つまり、治療介入という点では特定の細菌を減らすことよりも多様な細菌が共生する口腔内環境を作ることが重要のように思えます。口呼吸の習慣を是正することはその一つと考えます。
以上、長野さんの期待に応えるような回答ではないですが参考になれば幸いです。鼻うがいの洗浄液の量が多い場合(特に200mL以上)では副鼻腔に洗浄液が入るので鼻うがい後に鼻声になることがありますが通常は一時的で問題はありません。また食塩濃度が濃い高張食塩水の場合、鼻粘膜からサブスタンスPやヒスタミンが産生されて鼻閉を引き起こす場合があります。ウイルス性の感冒に鼻うがいが有効であったという海外からの臨床研究報告もありますので風邪をひいた時に鼻うがいを行うことは原則的には問題ないと思います。
今井先生、投稿ありがとうございます。患者さんのご了解が頂けるのであれば上咽頭所見の画像なども公開していただけると私たちの理解がより深まると思います。
Long-COVIDの慢性疲労症候群様の症状を呈する患者さんの根本に今井先生が示されたような激しい慢性上咽頭炎が存在するケースが多いのではと推察しております。それほど多い疾患でないので、こういうケースを経験した医師がJFIR広場で経験したケースにつき情報交換として症例を積み重ねていくことがコロナ後の深刻な症状で悩んでいる方々の光明につながるのではないかと期待しております。鼻から入れた洗浄液がもう一方の鼻から出る場合は洗える咽頭の範囲は上咽頭のみですが、口から出る場合は中咽頭までは洗えることになります。洗浄液を飲み込まないと下咽頭までは洗えません。鼻うがいの時に頭の位置をあげるほど咽頭には洗浄液が流れやすくなります。しかし、咽頭をしっかり洗おうとすると気管にも入りやすくなりますので、その場合は「エー」と言いながら鼻うがいをすることをお勧めします。
一点重要なことが抜けていました。
鼻うがいの時の「注入圧」です。
強い圧で入れると耳管に流入しやすくなるので、耳管に入りやすい人は低い注入圧でゆっくりと洗浄液を鼻孔から注入するのがコツです。
ご参考まで。堀田 修
頭をグッと前屈すると耳管咽頭口に到達する洗浄水が減ります(耳管への流れ込みが起きにくくなります)。この場合、一方の鼻から入れた洗浄水は反対の鼻から出て、咽頭の洗浄量は減ります。
また、頭を横に傾けると耳管に入りやすくなるので左右どちらかに頭は傾けない方が良いと思います。食塩濃度は水500ccに10gだと2%になるので高張食塩水です。風邪の治療には生理食塩水より高張食塩水の方が良いというのが一般的な見解です。プレフィア容器に入れて使うのであれば違和感がなければ2%で全く問題ないと思います。重曹(炭酸水素ナトリウム)は洗浄水のアルカリ化が目的で、生理学的には入れた方がよさそうに思えますが、実臨床で重曹を入れることで臨床効果が優れることを示した臨床試験の報告は私が調べた範囲では見つかりませんでした。現状では「重曹を入れるに越したことはないが入れなくてもOK」くらいの解釈で良いと思います。
結論から言うと「Bスポット療法」と「EAT」は同じ治療(上咽頭擦過療法)です。
また「鼻咽腔」と「上咽頭」も同じ部位になります。
以下に補足説明をします。
Bスポット療法のBは「鼻咽腔(びいんくう)」の「び」に由来します。
ちなみにこのBスポットという名前は、この治療の創始者である堀口申作先生が大学教授退官後に一般向けに本を出されたのですが、その際、出版社(光文社)の担当の方がこの名前を提案されたと聞いております。
現在は、情報の国際化が進み、海外からも上咽頭擦過療法についての問い合わせが来てそれに応える必要があります。また英語論文を外国医学雑誌に投稿する際はやはり上咽頭擦過療法の英語訳であるEpipharyngeal Abrasive Therapyの略であるEATが用いられています。
塩化亜鉛溶液を用いるのは堀口先生の原法で、透明な液なので慢性上咽頭炎がある時に認める擦過時の綿棒についた出血の程度がわかりやすいです。しかし、堀口先生の当時の論文を読むと薬液は塩化亜鉛溶液に固執してはおられなかったようです。
今後は塩化亜鉛溶液よりも優れたEATの薬液が登場するかも知れません。
いずれにせよ、綿棒で上咽頭をしっかりと擦ることがEATでは重要というのがEATを臨床に取り入れている医師の共通認識だと思います。コロナなどのウイルス感染予防のためにも外出先で鼻うがい(上咽頭洗浄)をすることは大変いいことだと思います。
洗浄液は食塩水で大丈夫なのですが洗浄液は鼻うがいの都度作ることをお勧めします。塩をミネラルウォーターか飲水可能な水道水に入れて作ります。容器はプレフィアの容器をそのまま使えばよいと思います。塩を持ち運ぶのが大変であれば市販されている鼻うがい用の洗浄剤(サーレS, サイナスリンスリフィルなど)を購入して使うのが簡単です。一包30円程度です。ただし、プレフィアの容器を使うのであれば洗浄剤一包を全部使うと濃すぎますので、1/4包程度の量が良いと思います。後鼻漏対策であれば粘膜の浮腫を改善するために0.9%生理食塩水より濃い高張食塩水がお勧めですので違和感のない最適な濃度をご自身で工夫されると良いと思います。安藤先生
そうですか。舌ストレスを改善するために、私が推奨している舌の運動は残念ながら効果がなさそうですが、歯を少し削るだけでも効果がある場合があるのですね。
私は門外漢ですが「歯をちょっと削るだけで、全身症状が劇的に改善する」というまぎれもない事実をこれまで二度経験しています。第一回目は私の前の職場であるJCHO仙台病院(旧仙台社会保険病院)での神戸の藤井先生の実技、そして二度目は当院HOCでの宅重先生の歯科治療と、いずれも私自身の患者さんを通じてです。理屈ではなくやはり実学は説得力がありますね。
このJFIR広場が医学部では絶対に全く学ぶことのない、歯をちょっと削ることによる全身へ影響を学んだり、意見交換をしたりする機会となりますことを期待しています。東洋医学に精通されている先生方へ
先日、HPVワクチン投与後、9年間も慢性疲労症候群で苦しんでいたという米国の患者さんから興味あるメールを頂戴しました。
この方が私の論文をお読みになりEATを米国で受けることはできないものかとの相談を以前受けたことがあります。
実はこの米国人女性が今年の8月にCraniocervical instability (CCI、 頭頚部不安定症)に対する非外科的な治療をお受けになったところ9年間も患った慢性疲労症候群の症状がすっかり消失したということで、その報告のメールを頂戴しました
治療の詳細は以下の彼女のSNSに紹介されています。読んでみると、この治療を日本ですぐに実施するのは難しそうですが、治療法の原理は、細胞の活性化と増殖を誘導するデキストロース溶液を痛みの原因となる部位に投与して、腱、靭帯、骨腱接合部、軟骨、関節包を強化する日本でも行われているプロロセラピー(prolotherapy,増殖治療)に近いものです。
https://medium.com/@mecfsmedicalrecovery/me-cfs-spinal-instability-tethered-cord-recovery-protocol-3e1eefffac8c
ポイントとなるのはCCIですがCCIは以下のサイトのMRI写真
https://me-pedia.org/wiki/Craniocervical_instability
にありますように大後頭前縁から第二頸椎後部下端に引いた線(Grabb-Oakes line)と硬膜
との距離(正常は6mm以下、Grabb-Oakes measurement)で診断するようです。調べてみるとCCIは自律神経障害の原因にあるようです。
MRI画像からわかるようにこの部位は上咽頭の真後ろです。CCIが上咽頭を中心とした領域のうっ血やリンパ路の通過障害に関係しているのでないかと推察しました。つまり、この理屈からするとCCIを持った慢性上咽頭炎例の場合はCCIを改善するような補助治療も有効なのではということになります。
東洋医学的見地から何かこの病態に関連するような治療法や知見はないでしょうか?
JFIRには東洋医学に詳しい会員の方々が何人もおられるのでご意見を頂戴できれば幸いです。小林先生、PPPを診療されている皮膚科の先生に質問です,
現在、十数例のPPPの患者さんがEATの治療目的で当院に通院されています。
改善の程度は症例により様々ですが、殆どの症例ではEATで皮膚症状や、SAPHO症候群では皮膚症状に加えて前胸部疼痛の改善を認めます。
PPPはIgA腎症とならぶ扁桃病巣疾患/TIASの一つですが、IgA腎症に比べると感冒で悪化することを自覚している患者さん(初診時に聞いているのですが)が少ない印象をもっております。みている患者数が少ないので偏りがありかも知れません。
感冒で悪化するPPPの頻度をご教示頂けましたら幸甚です。小児期に歯ごたえのあるものをよく噛んで食べさせることの重要さが良く分かりました。ありがとうございます。
また日常診療で「舌の圧痕」をしっかり観察する必要があるということですね。二点教えて下さい。
1.「口腔内、特に舌がベトベトする」という訴えの患者さんの治療は難渋します。これらの患者さんの多くは口腔内カンジダなどの治療はすでに受けていますが効果なしです。大学病院などを受診しても改善せず、藁をもつかむ思いでEATを希望して受診される患者さんが少なからずおられます。EATで他の自律神経症状は改善するのですが、見た目に異常がなくてもこの舌のベトベト感だけは難治です。舌過敏、ストレスの視点から何かヒントがありましたらご教授ください。
2.当院の外来患者さんは中高年の方が多いのですが、歯科矯正以外の方法として舌先を上顎に押し付けるような訓練(意識)や舌の体操などで舌ストレスの改善は期待出来るのでしょうか?
酒井先生
歯痛のため抜髄したけど改善せず、ほかの症状もありEATを実施したところ歯痛も改善したケースを経験しております。
①歯科治療において「なるべく抜髄はしない方が良い」と考えるのは妥当なことか?
②抜髄をした方が良いのはどういう病態の時か?この二点は私も含め歯科の門外漢の人々が知りたいことだと思いますのでご教授ください。
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