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トップページ フォーラム 慢性上咽頭炎関連 慢性上咽頭炎と自律神経機能障害

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    吉田 律樹JFIR 事務局
    キーマスター

     

    慢性上咽頭炎は中枢神経系リンパ排液路に位置する頭蓋底部/上咽頭の慢性炎症である。視診で著明な粘膜血管拡張と透過性亢進および静脈鬱滞を示すが、この領域のリンパ排液路鬱滞は上流の中枢神経系リンパ排液路鬱滞をもたらし、頭痛・うつ・不眠といった症状を招来する可能性がある。また近年では、上咽頭における舌咽神経/迷走神経や交感神経を含む自律神経終末の高密度集積が解剖学的に明らかにされ(Mu L.et al. J Neuropathol Exp Neurol.72:614,2013)、慢性炎症に伴う神経終末のirritationが自律神経機能障害をもたらしている可能性が示唆されている。

    では、慢性上咽頭炎による自律神経機能障害とは何なのか?古くから研究者の慧眼はこのことに言及している。

    1922年Baily: 「鼻から入ってくるリンパ流出路が咽頭部で閉塞されると、迷走神経その他の脳神経や交感神経節の機能に影響が及び、身体全体のあらゆる臓器に不調をもたらす」(Baily JH. Applied Anatomy of the Lymphatics ver.5 by F.P.Milliard)。

    1934年 Reilly: 「自律神経の中枢または末梢(または咽頭のような知覚神経線維の豊富な粘膜)の過剰刺激により惹起された全身諸臓器の障害をReilly現象と命名」「細菌毒素・物理的刺激・アレルギー反応などが刺激因子となり、この刺激は刺激を加えた部位より離れた臓器に血管拡張・血管透過性亢進・浮腫・梗塞・網内系の障害などをひきおこし、これら全てが臨床上の種々の悪性症状を引きおこす」(Reilly J. et al. C R Soc Biol. 116:24,1934)。

    1973年 堀口申作教授(東京医科歯科大学耳鼻咽喉科):「脳循環障害性眩暈症や頸性眩暈症などに鼻咽腔炎が併存していると自律神経異常亢進を来す」(古屋英彦. 堀口申作教授退官記念論文 日耳鼻 2:44,1973)。

    自律神経失調症に対する上咽頭擦過治療(EAT)の効果は堀口教授らがまとめているが、データでは、連日~週2回のEATをしつつ数ヶ月間(1~6ヶ月間)入院経過観察を行うと、成人眩暈では約89%、小児起立性調節障害では約67%が治癒し、また、回転性及び非回転性眩暈における治癒率はそれぞれ56%、57%と報告している(図1)。

    近年、急速に発展を遂げた神経回路の機能解析は、慢性上咽頭炎と自律神経機能障害との関連を説明しうる。迷走神経咽頭枝に端を発する上咽頭の知覚情報は、僅か数cm背側に位置する延髄孤束核に速やかに到達するが、孤束核にはハブ機能があり、脳幹部に存在する神経核間の連絡を経て、神経伝達・神経損傷抑制・再生・血流調節・疼痛制御・記憶・血管トーヌスによる脳血流調節、炎症抑制など多彩な機能に関与している。すなわち、迷走神経は視床・視床下部・下垂体・大脳皮質の機能全てに影響を及ぼしている。孤束核の情報は、更に迷走神経遠心路へも伝達されるが、進化的に古い背側迷走神経核を経た情報は主に横隔膜下の消化管機能を調節するのみならず、脾臓を介するマクロファージが関与する炎症を抑制することも明らかとなり、この経路を利用して、リウマチや潰瘍性大腸炎を治療する試みが近年行われている。一方、哺乳類は疑核を起始部とする腹側迷走神経を獲得しており、肺機能に応じて心臓を休ませる呼吸性不整脈という制御機構により生命安全性を高めている(図2)。

    つまり、Baily、Railly、そして堀口教授らの観察は、慢性上咽頭炎のように咽頭・口腔において病的な強い刺激、あるいは弱くとも持続的な刺激が加わると、組織に高密度に集積している舌咽・迷走神経や交感神経終末が侵襲を受け、あるいは過剰刺激されて迷走神経機能異常や交感神経機能異常がもたらされ、また、この情報が脳幹部に伝えられ、脳幹部における自律神経核間の連絡によって、更に広範囲に情報が伝播され、自律神経過剰刺激症候群として病的自律神経反射を誘発するのみならず、視床から大脳皮質にまで至る広い領域の脳神経機能にまで悪影響が及ぶ可能性を示していたのである。また、脳下垂体・副腎にまで影響が及ぶと、慢性疲労症候群や内分泌機能異常を招き、これは“Selyeの適応症候群”と呼ばれている。加えて、脳幹部において、種々に修飾されたインパルスが迷走神経遠心路や交感神経を介して遠隔の諸臓器にまで伝播されると、血管運動の撹乱や平滑筋緊張といった病理変化を示す微小循環障害をもたらしてしまうことにもなり、疾患としては消化性潰瘍・副腎出血・心筋梗塞などが起こりうる(図3)。

    図4に、慢性上咽頭炎によってもたらされる可能性のある自律神経機能障害に関連した症状や疾患の数々をまとめたので参照されたい。

     

    永野千代子

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    #380
    澤田石 順澤田石 順
    参加者

    澤田石 順(鶴巻温泉病院診療部回復期リハビリテーション病棟)と申します。”筋痛性脳脊髄炎[ME](慢性疲労症候群[CFS])、線維筋痛症、HPVワクチン接種後の症候群(HANS)”の患者さんたち200人くらいに、身体障害者手帳のための意見書を書いてきました。人生における生きがいとなっております。
     これら3種類の症候群は自覚症状と他覚所見の多くが共通しており、ほとんど全例で慢性上咽頭炎があり、EATにより改善するケースが少なくないことは先生達が報告されている通りです。
     PET, fMRI, 髄液検査、血液検査(フローサイトメトリーとか)で、”脳内炎症(マイクログリアの活性化等)/炎症性サイトカインの増加/自己抗体の検出”により免疫系の異常な更新があることは既に明らかだとみなせましょう。
     最近、新型コロナウイルス=SARS-Cov-2 による COVID-19 の後遺症として、三種類の症候群と類似する症状(倦怠感、易疲労、頭痛とか各所の痛み、睡眠障害、認知機能障害、機能性ディスペプシアなどの消化器症状・・・)が諸国で報告されるに至りました。
     私は、SARS-Cov-2感染後の症候群において、上咽頭炎が存在すると予想してましたが、なんと、今井一彰先生が報告されていることを二日前に知りました
    → コロナ後遺症特別外来(慢性上咽頭炎) 2021/2/7日(都内にて) https://mirai-iryou.com/info/longcovid_20210207/
     やはりそうなのですね。

    ☆脳脊髄液の一部は嗅神経の一次ニューロンが通る篩骨篩版を経由して嗅粘膜~上咽頭のリンパ管に流れる — このことは疑問の余地なき定説
     ※堀田修先生が2018年の総説で言及されていた Glymphatic system のことであります。
     
    ☆nose-to-brain drug deliver:インスリンなどの高分子物質を鼻腔から投与したら、脳室に入ることが知られている。この方向で鼻腔投与のワクチン接種の可能性が薬学研究者で近年は進んでいる — このことは事実。

    ☆四種類の症候群の病態についての仮説
     堀田修先生らが指摘するように、これら四種類の症候群は視床下部症候群として理解可能だと思われます。
     JFIR広場にての2020/9/5の投稿を拝見しました→ https://plaza.jfir.jp/forums/topic/%e6%85%a2%e6%80%a7%e4%b8%8a%e5%92%bd%e9%a0%ad%e7%82%8e%e3%81%a8%e8%87%aa%e5%be%8b%e7%a5%9e%e7%b5%8c%e6%a9%9f%e8%83%bd%e9%9a%9c%e5%ae%b3/
     慢性上咽頭炎により迷走神経の機能異常と交感神経系の機能異常おこり、視床下部症候群がもたらされるというようなことが仮説として示唆されていると思いました。そのような機序は確実にあると思いますが、それ以外の直接的な病態があるのではないかと愚行する次第です。

     私の仮説を申します。鍵となる事実は脳室周囲器官には血液脳関門がないこと。
     慢性上咽頭炎におけるサイトカイン(浸透圧により?)and/or免疫細胞(遊走して?)が、嗅上皮粘膜から篩骨篩版を経由して嗅球やその周囲のくも膜下に入り(上咽頭のうっ血に伴い、篩版からの脳脊髄液排出がうっ滞することが一つの理由)、そして脳室に逆流し、血液脳関門を欠如する脳室周囲器官の毛細管からサイトカイン等が脳実質(神経細胞の間隙)に入るのだという仮説です。
     脳室周囲器官は脳弓下器官(subformical organ)、交連下器官(subcommissural organ)、松果体(pineal body)、最後野(area postrema)、正中隆起(median eminence)、神経下垂体(neurohypophysis)、血管器官(organum vasculosum)など。これらの部位に、サイトカイン等が上咽頭から到達すると、脳における唯一の骨髄由来細胞であるマイクログリア(マクロファージの一種)が刺激されて、炎症・自己免疫が惹起されて、神経細胞の機能異常をもたらす。これで様々な症状が説明できるのではないでしょうか。

    ☆SARS-Cov-2/COVID-19の症状あるいは後遺症としての無嗅覚 anosmia について
     『カンデル神経科学』の最新版で嗅覚について勉強しております。慢性疲労症候群/線維筋痛症/HPVワクチン患者では嗅覚障害は知られてなく、逆に匂い過敏が少なくありません。上咽頭炎におけるサイトカインが脳室周囲器官の毛細管に流入するとの仮説により視床下部症候群を説明できますが、anosmia を説明できないように思います。SARS-Cov-2はACE2受容体に結合するわけですが、嗅神経とその関連細胞にACE2受容体が存在するとの記載を見つけることができませんでした。・・・・
     
     以上、愚説を述べた次第です。参考になりましたら幸いに存じます。

    P.S. 参考までに
    -自律神経科学からみた視床下部症候群(脳室周囲器官制御破綻症候群)の意義
    黒岩 義之, 平井 利明, 横田 俊平, 鈴木 可奈子, 中村 郁朗, 西岡 久寿樹 https://www.jstage.jst.go.jp/article/ans/56/4/56_185/_article/-char/ja/
    ↑HPVワクチン接種後患者を診療している医師たちによる。
    “脳室周囲器官と視床下部は恒常性維持器官であり,自律神経,概日リズム,神経内分泌(ストレス反応),情動・記憶・認知,感覚閾値・疼痛抑制,歩行・運動,神経代謝・神経免疫(熱エネルギー代謝,老廃物排出,自然免疫・腫瘍免疫)を制御する.血液脳関門を欠く有窓性毛細血管が密集する感覚性脳室周囲器官が感知した信号(光,匂い,音,電磁波,レプチン,グレリン)は視索前野,背内側視床下部を経て,休息型視床下部(摂食行動抑制中枢)と活動型視床下部(摂食行動促進中枢)に伝達される.心理ストレス情報は扁桃体から,概日リズム情報は視交叉上核から視床下部に入り,視床下部からオレキシン,バゾプレシン,オキシトシンが分泌される.視床下部症候群(脳室周囲器官制御破綻症候群)の背景疾患として,ヒトパピローマウィルスワクチン接種関連神経免疫症候群,慢性疲労症候群,脳脊髄液減少症,メトロニダゾール脳症,化学物質過敏症,電磁過敏症などがある.”

    #381
    今井 一彰今井 一彰
    参加者

    澤田石 順先生

    お世話になっております。みらいクリニック今井です。2/7にLongCOVID外来を行ってきました。相田歯科耳鼻科にて快く診療場所を提供してくださった相田先生に心から感謝します。

    また様々な視点にわたる治験をご教授いただきありがとうございます。

    昨年LongCOVIDで悩んでいる60代男性にEATを行ったところ好結果を得ることができまして(中等度の炎症でした)、今回の外来に至りました。

    この日はPCR陽性は3名でしたが、そのうち2名はCFSとしても重症でありました。内視鏡下でのEATを行いましたが、極重症の所見で、上咽頭部の巨大アデノイド、内部には多数の膿栓を擁していました。EATは後の出血のことを考えて経鼻からのみ行いましたが、それでも多量の出血を認めました。

    これでは様々な症状が出現するのもやむなしと思われる状態で、ここまでひどいとは想像しておりませんでした。申先生や平畑先生(コロナ外来をしています)も同席していただき上咽頭所見をシェアできたことは大きかったです。

    LongCOVIDも慢性上咽頭炎が深く関与していると確診するに足りうる経験でした。
    CFSでも同様の上咽頭所見を呈する方がいらっしゃいますので、LongCOVIDとCFSはかぶる部分が大きいですね。

    さらに驚くべきは、極重症のお二方とも鼻、咽頭症状はほとんど呈しておらず、こちらから問診してやっと「そういえばちょっと後鼻漏が」という程度でした。おそらく疲労に隠れて気がつきにくいのかなと想像します。

    これから症例を重ねていきますので、何かございましたらまたご報告いたします。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

    #382
    澤田石 順澤田石 順
    参加者

    今井先生本人からのコメントにおどろき、感激しました。本日、慢性疲労症候群/線維筋痛症/HPVワクチン接種患者において症状の多くが共通するのに、嗅覚障害のみが違う理由がわかったようになりました。SARS-Cov-2ウイルスが結合するACE2が、嗅粘膜の嗅細胞には発現してないけど、支持細胞と腺(分泌)細胞に発現しているとの論文がヒントでした。
    以下、メモをそのままです。(なお、慢性疲労症候群/線維筋痛症/HPVワクチン接種/COVID-19患者における上咽頭炎が嗅神経経路からの髄液排出を滞らせる[アミロイドβ等の有害物質のクリアランス低下]こと and/or 嗅粘膜経由[篩骨師板経由]でのサイトカイン/免疫細胞/ウイルスの嗅球/くも膜下/脳室/脳室周囲器官への逆流[そもそも正常でも存在する?]を惹起することで、視床下部症候群[脳室周囲器官制御破綻症候群]をもたらすことについては、臨床症状からしてほとんど確実だと私は思ってます)
    ——————
    ■ACE2はSARS-Cov-2が結合する受容体
    ▼医学における既知のこと
     ACE2の発現は呼吸系、消化器系、生殖系の細胞にて認められてきた。特に上気道においては、呼吸上皮と嗅上皮にて。
    ▼SARS-Cov-2/COVID-19患者は慢性疲労症候群/線維筋痛症/HPVワクチン接種患者と多くの症状が似ているのに、前1種類では嗅覚障害があり、後3種類では嗅覚過敏があるのは何故か?

    – The Spatial and Cell-Type Distribution of SARS-CoV-2 Receptor ACE2 in the Human and Mouse Brains. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33551947/ 2021 NON-FREE
    “Abstract
    By engaging angiotensin-converting enzyme 2 (ACE2 or Ace2), the novel pathogenic severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) invades host cells and affects many organs, including the brain. However, the distribution of ACE2 in the brain is still obscure. Here, we investigated the ACE2 expression in the brain by analyzing data from publicly available brain transcriptome databases. According to our spatial distribution analysis, ACE2 was relatively highly expressed in some brain locations, such as the choroid plexus and paraventricular nuclei of the thalamus. According to cell-type distribution analysis, nuclear expression of ACE2 was found in many neurons (both excitatory and inhibitory neurons) and some non-neuron cells (mainly astrocytes, oligodendrocytes, and endothelial cells) in the human middle temporal gyrus and posterior cingulate cortex. A few ACE2-expressing nuclei were found in a hippocampal dataset, and none were detected in the prefrontal cortex. Except for the additional high expression of Ace2 in the olfactory bulb areas for spatial distribution as well as in the pericytes and endothelial cells for cell-type distribution, the distribution of Ace2 in the mouse brain was similar to that in the human brain. Thus, our results reveal an outline of ACE2/Ace2 distribution in the human and mouse brains, which indicates that the brain infection of SARS-CoV-2 may be capable of inducing central nervous system symptoms in coronavirus disease 2019 (COVID-19) patients. Potential species differences should be considered when using mouse models to study the neurological effects of SARS-CoV-2 infection.
    Keywords: ACE2; COVID-19; SARS-coronavirus 2; angiotensin-converting enzyme 2; brain.”
    →新型コロナウイルスが結合するACE2レセプターは脳内において、脈絡叢や視床の脳室周囲器官にて強く発現している。人においては、強く発現している嗅球などを例外として、マウスにおける空間分布は同様。つまり、嗅球には新型コロナが結合するACE2受容体が多い。このことは直接に、嗅覚障害を説明する。

    – Evidence of SARS-CoV2 Entry Protein ACE2 in the Human Nose and Olfactory Bulb https://www.karger.com/Article/FullText/513040 2021 FREE
    in my PC: SARS-Cov-2とACE2_in_嗅上皮細胞の証拠_513040.pdf
    “Abstract
    Usually, pandemic COVID-19 disease, caused by SARS-CoV2, presents with mild respiratory symptoms such as fever, cough, but frequently also with anosmia and neurological symptoms. Virus-cell fusion is mediated by angiotensin-converting enzyme 2 (ACE2) and transmembrane serine protease 2 (TMPRSS2) with their organ expression pattern determining viral tropism. Clinical presentation suggests rapid viral dissemination to the central nervous system leading frequently to severe symptoms including viral meningitis. Here, we provide a comprehensive expression landscape of ACE2 and TMPRSS2 proteins across human postmortem nasal and olfactory tissue. Sagittal sections through the human nose complemented with immunolabelling of respective cell types represent different anatomically defined regions including olfactory epithelium, respiratory epithelium of the nasal conchae and the paranasal sinuses along with the hardly accessible human olfactory bulb. ACE2 can be detected in the olfactory epithelium as well as in the respiratory epithelium of the nasal septum, the nasal conchae, and the paranasal sinuses. ACE2 is located in the sustentacular cells and in the glandular cells in the olfactory epithelium as well as in the basal cells, glandular cells, and epithelial cells of the respiratory epithelium. Intriguingly, ACE2 is not expressed in mature or immature olfactory receptor neurons and basal cells in the olfactory epithelium. Similarly, ACE2 is not localized in the olfactory receptor neurons albeit the olfactory bulb is positive. Vice versa, TMPRSS2 can also be detected in the sustentacular cells and the glandular cells of the olfactory epithelium. Our findings provide the basic anatomical evidence for the expression of ACE2 and TMPRSS2 in the human nose, olfactory epithelium, and olfactory bulb. Thus, they are substantial for future studies that aim to elucidate the symptom of SARS-CoV2 induced anosmia via the olfactory pathway.
    Keywords: ACE2; Human; Olfactory bulb; Olfactory epithelium; SARS-CoV2.”
    ※感想と解説 by 澤田石 順
     SARS-Cov-2感染による死者を解剖して、鼻腔と嗅粘膜等についての研究した文献である。かなり決定的な証拠が得られたと思う。
    1) ACE2は嗅上皮の支持細胞/分泌細胞、そしてまた気道上皮の基底細胞/分泌細胞/上皮細胞に存在していた
    2)ACE2は興味深いことに、嗅細胞(におい受容体を有する)にも嗅上皮の基底細胞(嗅神経細胞に分化する)にも発現してなかった
    3)嗅球にはACE2が同定された
    4)この研究の前にて、嗅上皮と呼吸上皮のどの細胞においてはACE2やTMPRSS2が発現しているかについて明確なデータがなかったが、人間における死後の検討で初めての証拠が得られた? この研究は嗅神経にてはACE2が発現してないと確証はしないが、少なくとも嗅上皮の支持細胞/分泌細胞におけるACE2発現がSARS-Cov-2感染により惹起したことよりも、そもそも嗅上皮の支持細胞/分泌細胞にてACE2が発現していることをほとんど確実に証拠付けていると思える。すなわち、SARS-Cov-2感染が無症状であれ有症状のCOVID-19であれ、嗅覚障害は嗅上皮の支持細胞/分泌細胞の機能障害によることを強く示唆しているのだ。ニオイ受容体を有する嗅神経が直接に新型コロナにより侵害されるのではなく、嗅神経の機能を維持するための細胞2種類がACE2を有するためにSARS-Cov-2により傷害されることを示唆している。これら二種の細胞がACE2レセプターを介してSARS-Cov-2ウイルスに感染することで、ニオイ受容体を有する嗅神経そのものが直ちに機能障害におちいることは容易に想像され、それのみか再生能力が人体において抜群の嗅神経の再生自体が疎外されることも推定される。
    —————————-
    次は、嗅覚障害の治療について、本日知った論文などについて記したいと存じます。

    P.S. EATが LongCOVID に有効だったとの今井先生の報告群を受けて
     上咽頭炎による glymphatic system/pathway (主要経路の一つは篩骨師板・嗅神経を介しての脳脊髄液の排出)の機能低下をEATが修復する作用があることは既に明らかだと思いますが、先生の報告を知り、改めてEAT/上咽頭炎の重要性を知った次第です。ちなみに、慢性疲労症候群の患者会を支援する同志の申偉秀先生(練馬の関町内科クリニック)はEATの手技を習得しつつあります。私は回復期リハビリ病棟の勤務医ですが、さ来年には60才。楽な仕事してきましたが、60過ぎたら、EATを学び、それによる治療に集中して余生を充実させたいなと夢想している次第です。

    #385
    TANAKA AYAKIAYAKI TANAKA
    参加者

    澤田石順先生、今井一彰先生

    貴重なご意見と論文などありがとうございます。JFIR理事の田中耳鼻咽喉科の田中亜矢樹です。先生もご承知かと思われますが、
    Long COVIDとME/CFSの関連については、AMEDのME/CFS研究班の山村隆先生も日経メディカルの記事の中でもご発言されています。
    先生にご紹介いただいた論文はまたゆっくり拝読させていただきたいと思います。
    私自身、2019年の第15回日本疲労学会でのME/CFSシンポジウム2(2019年5月19日)で「上咽頭擦過療法EATのME/CFSにおける有用性とその作用機序仮説」についてシンポジストを務めました。
    総説論文は査読中です。
    https://site2.convention.co.jp/hirou2019/program/program.pdf
    慢性上咽頭炎、ME/CFS、Long COVIDはそれぞれ未解明ですが、相互に何らかの関連性を持っていると推察されます。
    また嗅上皮の支持細胞にACE2受容体が存在するために、COVIDで嗅覚障害がおこるこことは流行の比較的早期から耳鼻咽喉科領域では問題になっていました。現在でも嗅覚障害の検査治療については、COVID以前と比べても試行錯誤が続いているのが現状です。

    堀田先生や今井先生との共著論文、HPVワクチン副反応後のFSS(機能性身体症候群)に対するEATの効果についての論文は既に掲載されていますが、ある種の薬剤で「鼻咽頭炎」の副作用が報告されているのは興味深いところです。
    以下、2021年7月号(未発売)の日本臨牀特集号で私が執筆担当した「慢性上咽頭炎」の稿から一部抜粋して記します。
    「2016年の段階で医中誌WEBで検索すると200種を超える薬剤において「鼻咽頭炎」の副作用の記載があり、PubMedでの検索でも「Nasopharyngitis」の副作用の記載がある薬剤は同様に多数にのぼる。薬剤としては抗悪性腫瘍薬、抗リウマチ薬、糖尿病治療薬、造血薬、抗認知症薬、抗てんかん薬、抗ウイルス薬(抗B型肝炎薬、抗C型肝炎薬)、ロタウイルスワクチンなどが挙げられ、分子標的薬などが散見される。既にHPVワクチン副反応によるHANS6(HPV vaccsination-associated neuro-immunopathic syndrome)という機能性身体症候群(FSS:functional somatic syndrome )におけるEATの効果について報告(田中注:Immunol。Res.とJ of Antivirals&Antiretroviralsです)しており、ワクチンや抗体製剤(免疫賦活薬)による上咽頭のリンパ組織刺激、アジュバントを介したASIA(Autoimmune/inflammatory syndrome induced by adjuvants)の一表現型としての慢性上咽頭炎発症といった機序が考えられる。」というものです。

    先生のお示しいただいた「鍵となる事実は脳室周囲器官には血液脳関門がないこと」というお言葉には非常に多くの示唆が含まれているように思われます。
    仮に上述のように何らかの薬剤(経口薬や注射薬いずれでも)が鼻咽頭炎を引き起こすとしたら、その経路には脳室周囲器官の血液脳関門が無い部分からの侵入が想像されますし、SARS-COV-2のウイルス自体、ないしはウイルス感染によってもたらされたサイトカインなどの侵入経路は此処から始まるのかもしれません。

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    #387
    TANAKA AYAKIAYAKI TANAKA
    参加者

    HANS6の6は引用文献の番号で、削除を忘れてしまったものですので、意味はありません。正しくはもちろんHANSです。

    #388
    今井 一彰今井 一彰
    参加者

    澤田石先生
    ご丁寧な解説をありがとうございます。
    マウスの実験でも嗅上皮が広範に障害されるとの研究が東大から出ておりました。
    https://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/__icsFiles/afieldfile/2021/02/02/release_20210202.pdf
    すでにご存知だとは思いますが。

    2月7日は、申先生とコロナ後遺症外来で一躍時の人となった平畑先生が同席して下さいました。

    申先生のところでEATを受けている患者さんも受診されましたので、内視鏡下でEATを行い上咽頭炎の改善を確認いたしました。

    平畑先生は消化器内科で、経鼻内視鏡をしておられますので、これからEATを習得されると思います。ME/CFSにおいてはEATが有効な手段になると思いますので、これからも微力ながら知見を深めて参りたいと思います。

    ぜひまた色々とご教授下さい。

    #389
    澤田石 順澤田石 順
    参加者

    田中亜矢樹先生、コメントありがとうございました。
    2019年の日本疲労学会にて貴重な報告をされていたのですね。学会理事の倉恒 弘彦先生はME/CFSの診療/研究の第一人者ですが、患者会(特に青森県の患者の石川さんを通して知遇をいただいております。倉恒先生らがME/CFS患者における脳内炎症(by PET study)の存在を示したのはご存知と思います。
     COVID-19患者あるいは無症状であったSARS-Cov-2感染者の中で、後遺症ありの症例群において、PET studyが行われたり、NCNPの山村先生らの研究グループによりフロスサイトメトリーによる検討が実施されることが望まれると思います。
     申すまでもなく、SARS-Cov-2感染後の後遺症患者において、慢性上咽頭炎がどの程度の頻度で存在するのか、そしてまた、慢性上咽頭炎をEATで治療することで視床下部症候群の改善はどの程度となるのか、嗅覚障害の改善はどうなのかとか、大きく期待されると思います。私、情け無いことにME(CFS)/FM/HANS患者達とはつながりありますが、身体障害者手帳の取得のみでしか貢献出来てません。
     なので、堀田先生、今井先生、田中先生ら治療を実践しand/or研究をされている諸先生に期待するばかりです。

    >先生のお示しいただいた「鍵となる事実は脳室周囲器官には
    >血液脳関門がないこと」というお言葉には非常に多くの示唆が
    >含まれているように思われます。
    このことは鍵だと思うのです。ME/CFS/FM/HANSにおいて慢性上咽頭炎がほとんど全例において存在することが堀田先生らにより明らかだと思います。
    そもそも、健常者においても、嗅粘膜からの嗅神経系経路(glymphatic system)で、薬物等が嗅球/くも膜下/脳室に流入することが判明しております。
    https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja
    ↑にて nose-to-brain (delivery)で検索しますと、鼻腔への薬剤噴霧により脳室に送られる(脳室から上咽頭のリンパ管への経路はゆっくりなので単純に浸透している?)ことについて沢山の論文がみつかります。もちろんpubmedで検索しても、nose-to-brain deliveryについては数多の論文や総説があります。
    nose-to-brain経路でのワクチン/薬物/ペプチドが効果を発揮すると期待されている理由は、脳室に入ったそれら物質が、血液脳関門を欠如している脳室周囲器官の毛細管における陰圧部分から吸収されると考えられるからですね。
    先生が言及された↓↓について
    >仮に上述のように何らかの薬剤(経口薬や注射薬いずれでも)が鼻咽頭炎を
    >引き起こすとしたら、その経路には脳室周囲器官の血液脳関門が無い部分から
    >の侵入が想像されますし、SARS-COV-2のウイルス自体、ないしはウイルス感染に
    >よってもたらされたサイトカインなどの侵入経路は此処から始まるのかも
    >しれません。
     つまり、薬物による上咽頭炎であれ、SARS-Cov-2ウイルスによるそれであれ、HPVワクチンによるのであれ、ME/CFSの典型例にみられる風邪症状(viral infection)による上咽頭炎であれ、脳室から嗅上皮リンパ管→上咽頭リンパ管→頸部リンパ節という通常のglymphatic systemによる脳脊髄液の下降速度が低下して、nose-to-brainという逆行が強まるのだと仮定されると思います。単純に浸透圧勾配で脳室に物質(ウイルス、サイトカイン、薬物など)が逆流することは最も考えられますが、T細胞とか抗原提示細胞(APC)が逆方向に遊走することがglymphatic systemの鬱滞により可能となることも考えられるのではないかと思います。

    P.S. ★olfactory ensheathing cell (OEC)について
    例えば→ https://www.sciencedirect.com/topics/medicine-and-dentistry/olfactory-ensheathing-cell
    嗅神経は神経細胞の中では例外的に活発に再生を繰り返すことが知られております(寿命は40日くらい)。また、それは無髄神経であります。嗅上皮の基底細胞(SARS-Cov-2のACE2受容体を発現)が嗅神経に分化するわけですが、OCEは嗅神経の軸索(嗅球の糸球体に伸びる)の構築に関与するグリア細胞の一種。OECは再生医療分野では注目されており、脊髄損傷における自己移植(嗅粘膜から採取して移植)の試みで一定の成果が報告されております。jsage/pubmed(hubmed/medline)とかで検索すると、沢山の論文が見つかります。
     pubmed で olfactory ensheathing cell AND (ACE2 or SARS-Cov-2 or COVID-19)で検索してもヒットしないことから、OECはACE2受容体を発現していないのではないかと思います。あるいは誰もそのことは調べてないのかも知れません・・・・・・・

    #390
    澤田石 順澤田石 順
    参加者

    今井先生、東大グループによるSARS-Cov-2ウイルスによる嗅上皮脱落についての知見をご紹介下さりましてありがとうございました。
     嗅神経に分化する基底細胞がACE2を発現しており、支持細胞も発現していることで、嗅上皮脱落は説明できるわけなのですね。多くにては脱落後に再生するけどもそうではないことが少なくない。
     田中亜矢樹先生への返信にて言及した olfactory ensheathing cell (OEC)も anosmia が残った患者においてはほとんど死滅しているのかもしれません。
     けれども、EATにより上咽頭炎が軽減するならば、glymphatic system が正常機能に回復し、視床下部症候群の緩和・治癒が得られ、ひいては嗅細胞の再生も実現するのではないかと期待しております。
     今井先生、田中先生、堀田先生達の仕事に期待しております。
    (私、2009年の夏、ME/CFS患者[篠原三恵子さん、当時は慢性疲労症候群を共に考える会の会長]を申偉秀先生に無理矢理つなげたのでした。申先生はEAT(B-spot)の有効性を知り、それを学び、日常診療で実践されてます。私は回復期リハビリ病棟の勤務医でありまして、ME/FM/HANS患者の治療にはかかわってないのですが、EATを学びたい気持ちが強まってます。あいうべ体操とか鼻うがいについても・・)

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