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    吉田 律樹JFIR 事務局
    キーマスター

     

    細菌、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫など、ほとんどすべての微生物感染が腎臓を障害するが、感染による腎障害の発症機序は、大きく二つに分けられる。一つは、腎盂腎炎を代表とする病原体自体の腎臓への感染による直接的な障害、すなわち腎局所感染で、腎結核、移植腎への各種ウイルス感染症などもこれに含まれる。もう一つは、病原体の直接的な感染ではなく、病原体が保有し放出する毒素や、腎炎惹起性因子が二次的に、直接、あるいは免疫学的機序を介して間接に腎障害を惹起するもので、溶血性尿毒症症候群、各種原因菌による感染関連糸球体腎炎、感染関連間質性腎炎、サイトカインストームが関与する多臓器不全の一臓器症状としての急性腎障害など、多彩な病態が含まれる。

     

    吉澤らによって同定された溶連菌由来の腎炎惹起性因子NAPlrは、各種感染症が関与して発症する糸球体腎炎において高率に糸球体内への沈着がみられる事から感染関連糸球体腎炎全般のマーカーと捉えられるようになってきた。興味深いことにNAPlrはPSAGNだけでなく、臨床病理学的にC3腎症(DDD, C3腎炎)、MPGN、紫斑病性腎炎(IgA血管炎)、ANCA関連腎炎など多彩な病名で診断される症例の一部でも陽性となることが分かってきた。これら陽性例に共通する組織学的な特徴は管内増殖とC3沈着である。感染という同じ病因であっても宿主の背景により疾患のphenotypeが異なることを示唆する所見である。

     

    さらに、ANCA関連血管炎において、自己抗体であるANCAや好中球細胞質外トラップ(NETs)の形成が病因として挙げられているが、これらは何の誘因も無く形成されるはずは無く、その誘因として何らかの感染の関与が考えられる。又、IgA腎症のような慢性糸球体腎炎においても、pathogenic なIgA抗体の産生や、血尿/糸球体毛細血管炎の急性増悪などに、扁桃や上咽頭における感染の関与が堀田らを中心に報告されている。

     

    腎疾患・血管炎の病態形成に自然免疫・獲得免疫を含めた免疫学的な機序が関与することは広く認識されているが、本来、自然免疫と獲得免疫は、感染防御に協調して働く重要な機構であり、感染症の際に劇的な変動がみられるものと考えられる。

     

    以上のごとく、腎疾患・血管炎の発症を考える上で、宿主の遺伝的な背景は内因として全ての症例に共通して関与するものと考えられるが、外因として最上流に存在する最もポピュラーで重要な原因は、感染症であると考える。従って、腎疾患・血管炎の発症・進展機序を解明し治療に繋げていく上で、感染症との関連をより深く探求し、解決して行く事は極めて重要なステップであると確信する。

     

    東京医科大学八王子医療センター 腎臓病センター腎臓内科・血液浄化療法室

    尾田高志

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