長野智弘様。
投稿ありがとうございました。JFIR理事の田中耳鼻咽喉科の田中亜矢樹と申します。
フゾバクテリウム属、特にフゾバクテリウム・ネクロフォーラムはKiller sore throat(致死的な咽頭痛)と呼ばれるレミエール症候群を引き起こすことが知られています。
息子さんの場合、フソバクテリウム・ヌクレアタムが歯科領域で検出されたとのことですが、そもそもがフゾバクテリウム属は嫌気性菌ですので、通常の好気性環境で細菌培養検査の検体を採取しても嫌気性培養を行なわない限りフゾバクテリウム属の検出は一般の外来(耳鼻咽喉科領域でも歯科領域でも)では検出は困難ではないかと思います。
私の専門である耳鼻咽喉科領域では口蓋扁桃に留まる普通の急性口蓋扁桃炎では好気性環境(好気性培養)でフゾバクテリウム属が検出されることはほとんどありません。ただ急性口蓋扁桃炎から扁桃周囲膿瘍に発展した場合には、膿瘍を注射針で穿刺して嫌気培養をおこなうとフゾバクテリウム・ネクロフォーラムを検出することは時にあり得ることです。
以下リンクを貼ります。
このサイトには国立国際医療センターの早川佳代子先生の報告です。
論旨を要約すると、口蓋扁桃炎におけるフゾバクテリウム・ネクロフォーラムの関与はこの検討では溶連菌並みの10%程度に認められ、従来の報告よりも過小評価されている可能性があり得ると思います。
私見では繰り返しになりますが、嫌気培養を必要とするために実臨床では検出率が低く過小評価されているのかもしれないと考えます。
扁桃処置など口蓋扁桃の陰窩(腺窩、との古くはいいます)を咽頭捲綿子で圧迫して排膿することでいわゆる「臭い玉」を排膿することは多くあります。これも私見ですが、嫌気性菌感染は好気性菌よりも一般に「くさい(臭い)」ので、想像ではありますが、息子さんの場合には証明は困難ではあるものの口蓋扁桃にフゾバクテリウム・ネクロフォーラムやソバクテリウム・ヌクレアタムなどが潜在的に持続感染を起こしている可能性もあり得るのではないかと考えます。
なにがしかのお役に立てる情報であれば幸いです。