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トップページ フォーラム 慢性上咽頭炎関連 慢性上咽頭炎と自律神経機能障害 返信先: 慢性上咽頭炎と自律神経機能障害

#380
澤田石 順澤田石 順
参加者

    澤田石 順(鶴巻温泉病院診療部回復期リハビリテーション病棟)と申します。”筋痛性脳脊髄炎[ME](慢性疲労症候群[CFS])、線維筋痛症、HPVワクチン接種後の症候群(HANS)”の患者さんたち200人くらいに、身体障害者手帳のための意見書を書いてきました。人生における生きがいとなっております。
     これら3種類の症候群は自覚症状と他覚所見の多くが共通しており、ほとんど全例で慢性上咽頭炎があり、EATにより改善するケースが少なくないことは先生達が報告されている通りです。
     PET, fMRI, 髄液検査、血液検査(フローサイトメトリーとか)で、”脳内炎症(マイクログリアの活性化等)/炎症性サイトカインの増加/自己抗体の検出”により免疫系の異常な更新があることは既に明らかだとみなせましょう。
     最近、新型コロナウイルス=SARS-Cov-2 による COVID-19 の後遺症として、三種類の症候群と類似する症状(倦怠感、易疲労、頭痛とか各所の痛み、睡眠障害、認知機能障害、機能性ディスペプシアなどの消化器症状・・・)が諸国で報告されるに至りました。
     私は、SARS-Cov-2感染後の症候群において、上咽頭炎が存在すると予想してましたが、なんと、今井一彰先生が報告されていることを二日前に知りました
    → コロナ後遺症特別外来(慢性上咽頭炎) 2021/2/7日(都内にて) https://mirai-iryou.com/info/longcovid_20210207/
     やはりそうなのですね。

    ☆脳脊髄液の一部は嗅神経の一次ニューロンが通る篩骨篩版を経由して嗅粘膜~上咽頭のリンパ管に流れる — このことは疑問の余地なき定説
     ※堀田修先生が2018年の総説で言及されていた Glymphatic system のことであります。
     
    ☆nose-to-brain drug deliver:インスリンなどの高分子物質を鼻腔から投与したら、脳室に入ることが知られている。この方向で鼻腔投与のワクチン接種の可能性が薬学研究者で近年は進んでいる — このことは事実。

    ☆四種類の症候群の病態についての仮説
     堀田修先生らが指摘するように、これら四種類の症候群は視床下部症候群として理解可能だと思われます。
     JFIR広場にての2020/9/5の投稿を拝見しました→ https://plaza.jfir.jp/forums/topic/%e6%85%a2%e6%80%a7%e4%b8%8a%e5%92%bd%e9%a0%ad%e7%82%8e%e3%81%a8%e8%87%aa%e5%be%8b%e7%a5%9e%e7%b5%8c%e6%a9%9f%e8%83%bd%e9%9a%9c%e5%ae%b3/
     慢性上咽頭炎により迷走神経の機能異常と交感神経系の機能異常おこり、視床下部症候群がもたらされるというようなことが仮説として示唆されていると思いました。そのような機序は確実にあると思いますが、それ以外の直接的な病態があるのではないかと愚行する次第です。

     私の仮説を申します。鍵となる事実は脳室周囲器官には血液脳関門がないこと。
     慢性上咽頭炎におけるサイトカイン(浸透圧により?)and/or免疫細胞(遊走して?)が、嗅上皮粘膜から篩骨篩版を経由して嗅球やその周囲のくも膜下に入り(上咽頭のうっ血に伴い、篩版からの脳脊髄液排出がうっ滞することが一つの理由)、そして脳室に逆流し、血液脳関門を欠如する脳室周囲器官の毛細管からサイトカイン等が脳実質(神経細胞の間隙)に入るのだという仮説です。
     脳室周囲器官は脳弓下器官(subformical organ)、交連下器官(subcommissural organ)、松果体(pineal body)、最後野(area postrema)、正中隆起(median eminence)、神経下垂体(neurohypophysis)、血管器官(organum vasculosum)など。これらの部位に、サイトカイン等が上咽頭から到達すると、脳における唯一の骨髄由来細胞であるマイクログリア(マクロファージの一種)が刺激されて、炎症・自己免疫が惹起されて、神経細胞の機能異常をもたらす。これで様々な症状が説明できるのではないでしょうか。

    ☆SARS-Cov-2/COVID-19の症状あるいは後遺症としての無嗅覚 anosmia について
     『カンデル神経科学』の最新版で嗅覚について勉強しております。慢性疲労症候群/線維筋痛症/HPVワクチン患者では嗅覚障害は知られてなく、逆に匂い過敏が少なくありません。上咽頭炎におけるサイトカインが脳室周囲器官の毛細管に流入するとの仮説により視床下部症候群を説明できますが、anosmia を説明できないように思います。SARS-Cov-2はACE2受容体に結合するわけですが、嗅神経とその関連細胞にACE2受容体が存在するとの記載を見つけることができませんでした。・・・・
     
     以上、愚説を述べた次第です。参考になりましたら幸いに存じます。

    P.S. 参考までに
    -自律神経科学からみた視床下部症候群(脳室周囲器官制御破綻症候群)の意義
    黒岩 義之, 平井 利明, 横田 俊平, 鈴木 可奈子, 中村 郁朗, 西岡 久寿樹 https://www.jstage.jst.go.jp/article/ans/56/4/56_185/_article/-char/ja/
    ↑HPVワクチン接種後患者を診療している医師たちによる。
    “脳室周囲器官と視床下部は恒常性維持器官であり,自律神経,概日リズム,神経内分泌(ストレス反応),情動・記憶・認知,感覚閾値・疼痛抑制,歩行・運動,神経代謝・神経免疫(熱エネルギー代謝,老廃物排出,自然免疫・腫瘍免疫)を制御する.血液脳関門を欠く有窓性毛細血管が密集する感覚性脳室周囲器官が感知した信号(光,匂い,音,電磁波,レプチン,グレリン)は視索前野,背内側視床下部を経て,休息型視床下部(摂食行動抑制中枢)と活動型視床下部(摂食行動促進中枢)に伝達される.心理ストレス情報は扁桃体から,概日リズム情報は視交叉上核から視床下部に入り,視床下部からオレキシン,バゾプレシン,オキシトシンが分泌される.視床下部症候群(脳室周囲器官制御破綻症候群)の背景疾患として,ヒトパピローマウィルスワクチン接種関連神経免疫症候群,慢性疲労症候群,脳脊髄液減少症,メトロニダゾール脳症,化学物質過敏症,電磁過敏症などがある.”

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